「ちょっとあなた、どういうつもりなの!」
外の騒がしい気配で目が覚めてしまった。
どうやら部屋の外で女性と男性が言い合いをしているらしい。 少し離れているようだが、大声で口喧嘩をしているせいで丸聞こえだ。「お前こそうるさかったじゃないか!」
「私が何をしたって? 何かを引きずっていたのはあなたの方じゃないの!」
何事かと別の部屋からも様子を伺いに来る人が出始め、異変に気付いた宿の管理人が男女の仲裁に入ったようだ。
しばらく白熱していたが、双方和解する形で落ち着いたようだ。迷惑な人達だと思いながらも、溜まっていた疲れには勝てず、テレスは再び眠りについた。
ドン ドン ドン
テレスの部屋のドアを強くノックする音がする。
驚いて飛び起きドアを開けると、そこには体格のいい青年が立っていた。「お前、何やってんの? うるさくて眠れねえよ!」
急に怒鳴られたが、テレスには心当たりが無い。
ただ寝ていただけなのだが、疲れからイビキでもかいてしまっていたのだろうか。「すみません、そんなつもりは無かったのですが。私は疲れて寝ていただけですよ?」
「はぁ? そんな訳ないだろうが! おい、ちょっと失礼するぞ?」
青年は部屋に押し入ると、首を傾げた。
こんなはずはないと、一生懸命に床を確認し始めた。 何をしているのか分からないが、気の済むまで調べさせてあげた。「反対側の部屋の可能性はありませんか? 本当に寝ていただけなので、私の部屋ではないと思いますよ?」
「そうかもな。勘違いしたのかもしれない。邪魔して申し訳なかった!」
もしかすると、この青年も明日試験を受けるのかもしれない。
申し訳なさそうに部屋に戻る青年を見て、緊張でピリピリしていただけで根は良い奴なのかもしれないと思った。 一緒に合格出来たらすぐに友達になれそうだなと少し嬉しくなった。再びベッドに戻ったテレスであったが、こう何度も起こされてはなかなか眠ることが出来なかっ